不登校や不登校の傾向がある子どもが増え続け、フリースクールが注目されています。
しかし、フリースクールのイメージは漠然としていることが多いのではないでしょうか。
今回は、いざフリースクール通うときに「想定外だった」ということを減らすために「フリースクールに通う前に知っておきたいこと」をお話しします。
フリースクールは学校の代替ではない
フリースクールは、不登校の子どもたちを受け入れる場所であるため「学校の代替」と思われることがあります。
しかしフリースクールは、文部科学省が定める「学校」ではなく、塾と同じ立ち位置になります。
つまり、卒業してもフリースクールは学歴としては認められず、公的な卒業証明書や卒業証書もありません。
ただ、2017年に教育機会確保法が施行されてからは、フリースクールと学校との距離が縮まっています。
フリースクールが学校に戻るまでのつなぎではなく、学校で出席認定されるようになりつつあります。
出席認定とは、フリースクールへの登校が学校への登校日数としてカウントされることです。
フリースクールは、学歴としては認められていませんが、履歴書に記入することはできます。
学校に行かれず家にいる状況は、家族以外の人と接する機会がゼロになってしまいます。
長い期間、人と接しなければ徐々に人と接することが億劫になるのではないでしょうか。
不登校は悪いことではありません。
しかし、不登校が与える影響の中には悪いこともあります。
フリースクールは学校の代替ではありませんが、学校のかわりに人や社会と接する機会を与えてくれる場所です。
フリースクールはスクールごとに受け入れ条件がある
フリースクールは、スクールごとに特徴があります。
例えば、体が不自由で通学が難しい子どもが利用できる全寮制スクールもあれば、医師や教員などの免許保有スタッフが常駐しているスクールもあります。
活動内容も学習支援や絵画、課外活動やボランティアなどさまざまです。
フリースクールは、受け入れ年齢や対象児童に条件を設けているところがほとんどです。
受け入れる子どもの特徴に適したスタッフを配置することで、よりスクールに強みを出しています。
とくに受け入れ年齢はさまざまです。
小中学生のみを受け入れているところもあれば、30歳まで受け入れているところもあります。
フリースクールの先生は「先生」ではなくスタッフ
フリースクールでは、スクール内で働く大人を「先生」とは呼ばずにスタッフと呼ぶことが多いです。
スタッフは、学校の先生のように教員免許がなければなれないということはありません。
スタッフは、教員免許をもっている人や臨床心理士、支援教育カウンセラーなど専門的な知識で子どもたちをサポートできる人たちが多く集まっています。
文部科学省が行った2015年の調査によると、フリースクールのスタッフは教員免許をもっている人が約37%、心理の専門資格をもっている人が約10%です。
資格はないけれど、不登校の子どもたちを支援したい気持ちからボランティアとして働いている人もたくさんいます。
絵画や制作活動が多いフリースクールではプロとしての経験と指導経験が豊富なスタッフが多く、子どもたちは自分の好きなことを本格的に学びながら心を癒すことができます。
スタッフの特徴は、フリースクールを選ぶときの大切なポイントです。
見学時にはどのような経歴や資格をもったスタッフが多いのかを聞いてみましょう。
フリースクールは費用がかかる
フリースクールは費用がかかります。
フリースクールの「フリー」を「無料」と勘違いしてしまう人もいるようです。
フリースクールの「フリー」は「解き放たれた」という意味です。
費用の内訳は、入会金と月額授業料です。
調理体験や製作や屋外での活動があるフリースクールでは別途活動費や材料費が必要になります。
また、子どもに合ったフリースクールが自宅近くにあるとは限りません。
フリースクールには片道1~2時間以上かかる子どもも多く、交通費も必要です。
在籍している学校が出席認定をした場合は通学定期券の購入(学割購入)が可能になります。
フリースクールは個々の活動100%とは限らない
フリースクールには、不登校の子どもたちがやってきます。
そのため、ひとり一人の個別活動ばかりで他の子どもたちとは関わることがないと思われていることがあります。
しかし、人が複数人集まれば関りがゼロになることはないのではないでしょうか。
フリースクールには時間割やカリキュラムがありません。
子どもたちは、自分のやりたいことを好きなタイミングで始めます。
歌を歌いたい子どもと静かに絵を描きたい子どもが同じ空間にいれば、どちらかが我慢をしなければなりません。
学校ならば先生が「今は静かに絵を描く時間です」と言うだけです。
ルールを守れない子どもの居場所はなくなってしまいます。
一方、フリースクールでは子どもひとり一人の気持ちが優先されます。
話し合いをしてお互いが納得できる「落としどころ」を探します。
全員共通のルールを設けないことで「みんなの居場所」になれるだけでなく、人と関わる機会を残すことができます。
おわりに
フリースクールは、認知度が低かっただけに独特のイメージが独り歩きしているところがあります。
想像と現実にギャップがあると、それだけで目に見えない抵抗ができてしまうことがあります。
事前に必要な情報を集めて、親子で楽しみながらフリースクール探しをしてみてはいかがでしょうか。
文筆:式部順子(しきべ じゅんこ) 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業 サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。 在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。