フリースクールとは? 知っておきたいフリースクールの基礎知識

「フリースクールという言葉は聞いたことがあるけれど詳しいことはわからない」という人も多いのではないでしょうか。また「フリースクールは特別な学校」というイメージをもっている人も多いのではないでしょうか。

今回は、知っているようで知らない「フリースクールの基礎知識」をお話しします。
意外と多いフリースクールの種類から費用相場、そして活動内容まで徹底解説します。

フリースクールとは?

 フリースクールとは、スクール(学校)という名前はついていますが、目的は「学校以外の居場所」です。
1980年代から広がり始め、現在は全国に500施設以上あり4,200人以上(小学生約1,800人・中学生約2,400人)が利用しています。

フリースクールは、学校の代替えとして通う場所ではないため、クラス制で授業が行われる場所でも塾のように学力向上を目指す場所でもありません。
さまざまな理由で不登校になった子どもや学校に行きたくても行かれない子、あえて学校に行かない選択をした子どもがフリースクールには在籍しています。

フリースクールは法律上の学校ではありません。
フリースクールは民間の団体や施設が運営しています。
そのため義務教育中の通学でも費用が別途必要です。

小中学生(義務教育中)でフリースクールに通う場合は、小学校や中学校に在籍しながらフリースクールに通うことになります。
ただし、在籍している小中学校の校長先生の判断により、フリースクールへの登校を出席扱いにすることも可能です。
文部科学省の調査によるとフリースクールなどの活動に参加している子どもたちのうち、約56%は出席扱いとされています。

参考資料「文部科学省「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査―2-①在籍者数等より」」:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tyousa/__icsFiles/afieldfile/2015/08/05/1360614_02.pdf

各フリースクールは、子どもたちの目的や事情に応じて専門のスタッフを配置したり、支援を考えたりしています。
子どもひとり一人の状況に適したフリースクールをみつけることがポイントです。

 

フリースクールの種類


フリースクールには、いくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。

<フリースクール>

さまざまな理由で不登校になった子どもたちを受け入れている場所です。
通学日数や時間の融通がきき、活動内容もひとり一人に合わせた内容です。

フリースクールの規模は、5人以下が多く、少人数制もしくは個別対応で無理のない活動を続けられるメリットがあります。
フリースクールは、カウンセリングや保護者が相談しやすい環境が整っている特徴があります。

<オルタナティブスクール>

オルタナティブスクールとは、シュタイナー教育やモンテッソーリ教育のように理念や方針をもって活動をするスクールです。
オルタナティブとは「代替えの」という意味になり、一般的な学校とは一味ちがった教育方針を求める人に適しています。

オルタナティブ教育では、ひとり一人の個性を重視し、主体的に学ぶ方針のスクールが多いです。
学校法人として運営しているスクールもあります。

<インターネットスクール>

自宅でネット回線を使い学習をするスクールです。
全国でフリースクールに通っている子どもたちは約4,200人以上といわれていますが、全国で不登校になっている子どもは24万人を突破しています。
フリースクールに通えている子どもたちは氷山の一角です。
インターネットスクールは、さまざまな理由でフリースクールに通えない子どもたちにも手が届きやすいスクールでしょう。

インターネットスクールは、オンライン上でスタッフが勉強や活動のフォローを行います。

<通信制高校の初等部や中等部>

通信制高校やサポート校が運営しています。
高校に併設されていることが多く、小中学校からそのまま通信制の高校に進学することもできます。
費用はフリースクールよりも高めの傾向があります。

<教育支援センター>

教育支援センター(旧適応指導教室)は、公的なスクールです。
地域ごとの教育委員会が開設し、不登校の子供たちのカウンセリングをしながら学校に戻る支援をします。

教育支援センターは費用がかかりません。
ただし、教育委員会が運営しているため、校区が決められていたり、学校に戻ることが求められたりすることもあります。
「心を癒す」ということを第一に考えるならば、学校に戻ることを前提としないフリースクールのほうが適しているのではないでしょうか。


フリースクールの費用相場

フリースクールは、義務教育中であっても別途費用がかかります。
入会金と月額授業料のほかに活動費や教材費が必要になることもあります。
フリースクールは、長期にわたって通う可能性もあります。費用はしっかりと確認したいポイントです。

文部科学省の調査によると、全国のフリースクールの入会金平均は53,000円、月額授業料は33,000円です。
しかし月額授業料の相場は、地域によってかなり幅があります。
東京都の平均月額授業料は45,000円というデータもあります。

参考URL「文部科学省「小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う民間の団体・施設に関する調査―⑤会費等の状況より」:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tyousa/__icsFiles/afieldfile/2015/08/05/1360614_02.pdf

けして安いとはいえない金額ですが、減免制度や助成金の利用ができるスクールもあります。東京都については、2023年1月にフリースクールに通う小中学生を対象に1人あたり年間最大24万円を支給する方針を発表しました。今後はフリースクール運営事業者への補助も検討される予定です。

参考URL「東京都教育委員会 令和5年度フリースクール等に通う不登校児童・生徒支援調査研究事業への調査研究協力者の募集について」:https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/content/research_collaborator.html

フリースクールの費用相場は、立地や活動内容によって大きく変わります。活動内容をしっかりとチェックし、利用できる制度や補助も合わせて確認することをおすすめします。

フリースクールの活動内容


フリースクールの活動内容は、ミーティングと呼ばれる話し合いで決めたり、個々の希望で行ったりします。
学校のように「決まったカリキュラムをこなす」ということはありません。
具体例を挙げると、お菓子作りや制作活動、ゲームやプログラミングなどです。
地域によっては農業体験やキャンプをすることもあります。

もしかしたら「えっ、ゲームしたり絵を描いたりするだけならフリースクールに行かせる意味がない」と思う保護者もいるかもしれません。
フリースクールの目的は、学校でも家庭でもない「もうひとつの居場所」です。
子どもたちが居心地よく感じる活動ができる場所がフリースクールです。
子どもたちは、個々の活動を通して心を癒します。


おわりに


フリースクールについて詳しく知らない人の中には「学校>フリースクール」というイメージをもっている人も多いかもしれません。
しかし、子どもが成長できる場所はひとり一人違います。
フリースクールを卒業した子どもたちの中には、心をしっかりと癒し、自信をもって次のステップに進んだ人たちがたくさんいます。

今、小さな世界で苦しんでいる子どもたちは「学校が無理ならフリースクールがあるよ」と声をかけられるだけで心が楽になるのではないでしょうか。

 

文筆:式部順子(しきべ じゅんこ) 武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業 サークルは五美術大学管弦楽団に在籍し、他大学の美大生や留学生との交流を通じ、油絵や映像という垣根を超えた視野をみにつけることができた。 在学中よりエッセイを執筆。「感性さえあれば、美術は場所や立場を超えて心を解き放つ」をモットーに美術の魅力を発信。子育て中に保育士資格を取得。今後は自身の子育て経験もいかし「美術が子どもに与える影響」「感性の大切さ」を伝えていきたい。

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